第173回定例会報告

第173回定例会報告:
医療法人正清会  六角牛病院
高橋 太樹



今回の事例を通じて、文化・宗教の違いが心理的な負担を大きく与える可能性があること、生活歴を見つめ直す事の大切さを再認識しました。事例と関わる中で「匂い」に着目し嗅覚刺激を用いて心理的負担の軽減を図ったり、会話を通じてめまいの原因を探ったりと、身体的な治療と並行して心理面にも目を向け、柔軟なプログラムを立案・実施していたと思います。
また、事例にとって、入院により良くも悪くも自分の感情を表現できたことは、ずいぶん心が満たされた事だろうと思いました。
外国人でなくても心のよりどころに乏しく、社会的な孤立状態にある方は世の中にたくさんいると思います。そういう方々への援助を行う際に、自分も「心のこもった」援助が出来るといいな、と思いました。
参加させていただき有難うございました。



二本松会上山病院 佐藤知生

 好天の中、今回は岩手での定例会でした。
フィリピン生れ・フィリピン育ちの女性が、日本に嫁いできて、風土・文化・宗教など全く違った環境で二人の子供を育てている。その状況の中で、「身体表現性障害」と診断されるに至る症状で、一般科病院へ3回入院することになりました。その都度リハのオーダーが出され、作業療法士(発表者)も関わるが、3回目の入院では身体面への視点を捨て、あくまでも精神的側面へのアプローチを意識した関わりをするに至ります。その症例の特性である「匂い」に着目したことが、効を奏した経過でありました。
生れ育った環境から離れ、まったく別の環境での孤独や不安が推察され、そのことの影響の大きさ、特に宗教が生活の根本に根差した文化へ、日本人が理解をすることの難しさを感じました。
一般科での作業療法ではありますが、作業療法としては身体・精神ともに共通する部分と、やはり特に精神面への着目が必要である部分と双方を感じた作業療法の経過でした。