平成25年度 冬の研修会

宮城県立精神医療センター 酒井道代

 今回の公開症例検討会は、当研究会設立20周年という記念すべき研修会として行われました。自分自身がこの研究会に参加させていただいたのが、臨床1年目の新人の時。早、14年程前のことです。ここ数年は仕事、子育て、介護等でなかなか週末の研究会には参加できずにいましたが、今回はお祝いということで、母にゴマすり子供たちをお願いして夜通しの参加が実現しました。
 今回の症例は、高校生で統合失調症を発症しながらも必死の思いで復学するのですが、その後の東日本大震災で同居していた祖父母をなくすという、多くの喪失体験の中を生きる20代の女性のAさん。担当OTRの鈴木さんとの出会いは、入院中の個人OT。その後、集団OT、退院、デイケア、再入院、個人OTの再開、そして現在のデイケアでの関わり。震災後の復興と時を同じくして経過するAさんの葛藤、さびしさ、祖父母への思い、大切な存在を失いバランスを崩した家庭を1つに死体という思い…。
 行きつ戻りつ揺れ動くAさんがそばに寄り添い続ける鈴木さんに、自分自身の人生を振り返り語り出す日がこれから来るのだと思います。
 基調講演では、私の上司でもある香山の歴史を身近に感じながら聞くことができ、自分自身の対象者との向き合い方を改めて考えることができました。
 記念シンポジウムでは、当研究会でも日頃より多大なるご尽力頂いている山根先生、小林先生、比留間先生に来ていただき、先生方それぞれの作業療法に対する熱い思いが伝わる講義を聞かせていただきました。また、日々精神科作業療法に携わる我々に対し、愛ある喝を入れていただき、日々の臨床を社会に発信していくことの重要性を再確認することができました。
 このような貴重な時間を過ごすことができ、講師の先生方、症例提供者の鈴木さん、実行委員の皆様に感謝申し上げます。