令和7年 年頭の挨拶

 リアルということ

                     

臨床精神科作業療法研究会 代表 青山 宏


昨年は、元旦の夕方に発生した能登半島地震に始まり、あきれるほどの災厄に満ちた年でした。世界も軋みを上げているように感じられた年でもありました。一方で、大谷選手、河村選手の活躍、オリンピック開催などの明るい話題もありました。本年が、より明るい喜びの多い年になるように切望しています。

昨年11月の研修会のテーマは、「福島県浜通り相双地域 メンタルヘルス分野で働くOT達の今~被災地で人と地域と向き合いながら~」でした。シンポジストの皆さんの活動報告を聴き、ディスカッションに参加し、地震などの災害における作業療法の役割などについて考える機会となりました。研修会後に行われた、今年で発生14年になる東日本大震災の震災遺構である浪江町立請戸小学校や原子力災害伝承館の見学会では、改めて災害と日常の暮らしや生活と作業の関係について見つめ直すことができました。同時に、30年前の阪神淡路大震災時のボランティアで伺った神戸の光景も思い浮かびました。

今回の見学会で特に印象に残ったのが浪江町立請戸小学校の遺構でした。半壊した校舎や教室、給食室。11月終わりの寒い風や潮の香り。子供たちが避難で目指した小高い丘のような大平山の姿や距離。見るものや感じられる光景に感慨を覚えると同時に、当時の子供たちや先生たちの不安や寒さを想像すると胸を締め付けられました。そこでは、過去に映像資料などで見たはずのものが、よりリアルに囁きかけてくるような気がしました。やはり、実際に見て触れて感じることの大切さも併せて感じることができた体験でした。

当研究会の定例会や研修会が対面とZOOMでのハイブリッド開催になってから数年が経ちます。遠くからでも参加でき、時間節約や交通費の面での便利さなどのメリットや恩恵もありました。一方で、対面での事例検討の手触りのあるリアルな良さが少し失われているとも感じています。参加者の息遣い、表情、姿勢、しぐさや全体の雰囲気が醸し出す集団と場の相互関係などが事例検討に厚みを加えてくれていたように思うからです。やはりリアルに勝るものはないのではないかと感じるこの頃です。ぜひ会員の皆様も対面会場に来てリアルな体験をしてみませんか。また、時々行われる事例検討後のオフ会の楽しさも味わっていただきたいものです。

改めて、本年も当研究会へのご支援をお願いするとともに、会員の皆様のご健勝を心からお祈り申し上げます。