「今」、だから考えること
研究会会員各位様
臨床精神科作業療法研究会 代表 青山 宏
季節は初夏となり、戸外の光のきらめきがさわやかに感じられる頃となりました。しかし、今年は重苦しい気配に圧倒される日々が続きます。会員の皆様にはお元気でお過ごしでしょうか。年初から続く新型コロナ禍の影響のもと、臨床や福祉の現場運営、家庭生活、育児等にさぞご苦労が多いことと思います。心からお見舞い申し上げます。また、定例会や総会の中止などにより、会員の皆様には直接的な不利益をおかけして申し訳ありません。お詫び申し上げます。
今回の新型コロナ禍では、5月1週において世界の死者は25万人を超え、日本においても長期間にわたる活動制限が続きそうです。現状では、医療や福祉の崩壊が懸念され、経済への負の影響からくる人命の危機も懸念されています。
思えば、あの未曾有の大災害であった9年前の東日本大震災時と今回の新型コロナ禍を比べて見ると、世の中の論調の違いに驚きを感じます。震災時には、「絆、絆・・・」と連帯が連呼されていました。一方、今回の災害には、分断、隔離、監視、つるし上げ、差別が強調されています。医療福祉関係者へのいわれのない中傷も目立っています。この違いは何なのでしょうか。可視化できる災害と不可視な災害の違いかもしれません。あるいは、自分がいつ当事者になるのかもしれないというリアリティへの恐れの違いとも考えられます。
先日、学生たちと「精神障害に対する恐れと新型コロナに対する恐れ」について話し合う機会がありました。詳細は置いておきますが、恐れの共通点は、病や障害の原因、検査法や治療法が確定していないこと、目に見えにくいこと。相違点は、自分が当事者になることに対するリアリティという意見になりました。「誰でもかかりうる病気」とした厚労省精神保健対策本部の改革ビジョン宣言発表から16年経ちました。未だ、自分たちとは関係のない疾患ととらえられる精神障害への偏見を改めてつらく思い返してしまいます。
いずれにせよ、今回の事態を通して、病を正しく、科学的に恐れ対策すること。情報を精査し、自分の頭で考えること。また、医療福祉の専門職としての自分と、人間としてありたい自分をきちんと問い直す機会にできたらいいとも感じています。
今後は、一日も早い新型コロナ禍の終息を願うとともに、本研究会活動においても新しい活動の方法論も、併せて模索する必要があるかもしれません。事例検討や研修会における、ダイナミックで直接的交流を、どのように安全に保障していけるのか、会員の皆様にも、お知恵を拝借したいと考えています。
どうぞ、皆様の健やかな日常の作業が、一日でも早く戻ってくることを祈っています。