令和6年 年頭の挨拶

 災害依存ではない、つながりを求めて


臨床精神科作業療法研究会 代表 青山  宏


あけましておめでとうございます。新しい年を迎えることができたことを慶んでいます。また、会員の皆様が迎えた本年が素敵な年になるように祈念しています。

昨年10月下旬には、本研究会の設立30周年を記念する研修会、祝賀会を開催することができました。研修会には、多くの参加を頂きありがとうございました。会員の皆様をはじめ、当会を支えていただいた多くの皆様のご支援のおかげだと深く感謝しています。誠にありがとうございました。また、祝賀会も大いに盛り上がり楽しい時間を過ごせました。30年というのは大変に長い歳月だと思います。この歳月は、臨床における精神障害領域の作業療法に少しでも貢献したいという決意を持った皆様の熱い思いが結実した歩みだと思っています。

さて、毎年年頭のご挨拶をさせていただいていますが、何年かを振り返っても輝かしく晴れやかな挨拶文がありません。私の傾向かもしれませんが、いつも天災人災、紛争、事件や流行り病の嘆きから始まっています。おそらく、困難が安らぎを凌駕しているように感じてしまっているのでしょう。人が自分たちで作り上げてきた国という制度の犠牲になっているような状況を見ると、ジョンレノンが「But I'm not the only one」と歌うのに「そうだよ」と返答したくなります。

うろ覚えですが、29年前の阪神淡路大震災の後には「連帯」が、13年前の東日本震災の後には「絆」という言葉がテレビなどで連呼されていたように思い出します。また、阪神淡路大震災のころから、ボランティアという言葉もより市民権を得てきました。その後の災害時などの活躍は目覚ましいものがあります。とてもいいことだとは思いますが、一方で時間が経つと、いつの間にか連帯への関心が薄れていく気もしています。仕方がないのでしょうが、やはり持続的、継続的な連帯への思いがあってもいいように感じます。いわば災害があった時に起こってくる災害依存性連帯という形の連帯だけではなく、困っている人や弱い立場の人への温かい視点、そうでなくても身近にいる人たちへと日常的に手を伸ばすような連帯があってもいいように思います。

当会も、いよいよ31年目に向かって歩き出すことになります。同じ志を持つ会員の皆様と方法論やアプローチが違っても、災害に依存しない、緩く変わらない連帯やつながりを目指して、これからもこの研究会の活動が進んでいけるよう、皆様のご協力をお願いします。