令和5年 年頭の挨拶

 関心を持つ


臨床精神科作業療法研究会代表 青山 宏

新年を迎えることができたことを会員の皆様と共に慶びたいと思います。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

  昨年は、コロナ禍に加え、胸が締め付けられるような出来事のあった年でした。世界の大きな均衡の基では、もう戦争は起きないものだという根拠のない妄信が砕かれた年になりました。原発も使い方によって武器になることも初めて知りました。自分自身の不明を恥じるとともに忸怩たる思いです。ここで改めて平和や安全を希求するために何ができるのかを自問したいと思います。

さて、昨年後半の研究会では、香山理事からの提案で「精神科作業療法のこれから」について話し合う機会がありました。最近、「作業療法は元気がない」といわれるのはなぜかなどの問いに関して、メンバーで考えました。色々な意見がありました。振り返って考えてみると、作業療法をめぐる情勢はずいぶん変わってきたのだと思いました。精神科医療の中では、作業療法そして作業療法士は確かに認知度がアップしてきたと思います。香山さんや私たちの世代のような、何とか作業療法を分かって欲しい、存在を認めて欲しいという状態は変わってきたようです。すでに精神科医療の中では、その存在を認められている状況になっています。それは、望ましい状況だと思います。ただ、作業療法や作業療法士の存在を何とか認めて欲しいという努力が要らない状況ともいえます。そのことが、自らの専門性への関心や、周囲に対する周知への動機が薄れることにもつながっていると考えられます。

私は、関心を持つことはとても大切なことだと思っています。例えば、好きだと思っている人がいたとすると、その人の髪型や化粧、服装、元気があるかないかなどの微妙な変化にもすぐに気づくはずです 逆に関心がない人については変化どころか、その人の存在にさえ気が付かないことがあります。そう考えると、対象となる患者さんや周囲の人々、あるいは自分の体調、作業療法のトピック、作業療法を取り巻く状況や世界の出来事に関心を寄せることで、見えてくるものがきっとあるはずです。また、その関心を持つということが、対象者の利益につながり、自らの専門性を高め、仕事を面白くしていくことにもつながるのだと思います。

年頭の挨拶が年寄りの繰り言のようになってしまいました。ただ、昨年の研究会活動の中で、元気で意欲的な若手や中堅の会員が増えてきていることを本当に喜んでいます。その中堅、若手の会員が現場にいる、まだ会員ではない作業療法士をも元気づけ刺激し続けてくれるようにお願いしたいと思います。

一方的に権威者の話を聞くという形式の勉強会や研究会にはない、相互的な交流の中で語り合うことの喜びをもたらしてくれる、この研究会の活動が本年も明るいものになるよう祈念しています。