平成28年 新しい時代への旅立ちに


臨床精神科作業療法研究会
 代表 青山  宏


 新しい年が明け、一月が経ちました。改めて今年のご挨拶をさせていただきます。今年は、阪神淡路大震災から21年、東日本大震災から5年の節目の年となります。私自身にとっても、阪神淡路大震災の2ヶ月後に大阪から仙台に移り住み、この研究会に参加してから21年になります。この21年間、そして5年間、何が変わり、何が変わらなかったのでしょうか。

  昨年も、また、さまざまな自然災害、人的災害、戦争にテロ、殺人に自殺と、慄然とするような事態に満ちた苦渋の年でした。もちろん、心温まるニュースもあったはずですが、すぐには頭に浮かんできません。

  と、ここまで書いてきてびっくりしました。それは、前年の新年挨拶とほとんど同じことを書いているからです。「自然災害、人的災害、戦争にテロ、殺人に自殺」の言葉が、エンドレスに繰り返されてしまう世の中。なんということでしょうか。国内では、安保法案が成立し、人知のコントロールを超えた原発も再稼働、格差も固定化されそうな現状です。世界に目を向けると難民をめぐる不寛容と差別、大統領選挙での極端な言動への支持、そして相変わらずのテロと報復。暗澹とした連鎖は続いたままです。

 でも、その中でも、若者や女性が安保法案をめぐり現状への違和に対し声をあげ始めたことは画期的なことのように思います。政党やセクトにとらわれない新しい形の社会的な主張が始まったようにも感じます。今年は、投票年齢が引き下げられて初めての選挙の年でもあります。年若い有権者の投票行動に大きな関心を持ちたいと思います。
 今年は猿年です。日光の三猿ではありませんが、社会や世界で起きている事態に対し、例年にも増して「目を閉ざさない」、「耳を閉ざさない」、「口を閉ざさない」で、向き合い、諦めや、惰性を廃して、より社会に世界に関心を持ち続け、考え続けることの大切さを確認する必要があるのではないでしょうか。

 幸い、この研究会に集う人は、臨床の症例に学び続け、作業の力を信じ続けるという共通基盤を持っています。研究会活動を続ける中で、世間の情勢に流されず、あわてず、焦らず、自分の力を蓄え、磨き、世界と自分の関係を見据えながら今年も、共に歩みを続けていきたいと願っています。

 
 本年の、皆様のご多幸と、世界の平和を祈りつつ、共に歩んで行けたらと心から祈念しています。どうぞよろしくお願いいたします。

2016.1.1